さて、今回は「趣向を凝らした10冊」と予告しましたが、どういうことかというと…
お盆を過ぎて晩夏を迎えた今、これまで自分に大きな影響を与えた10冊を再読したくなったという話。
ストーナーを読んだ時に、同じように心が震えた本を思い出し、また読みたくなったのです。
こころ
夏目 漱石著
あまりにスタンダードで、逆にリストに挙がってこない作品かもしれないですが、実際には人生のステージによって、読むたびに感じ方が違う小説とも言われております名作ですね。
中学生の時に読んだ時は「先生」が体験した悲劇とその結末に衝撃を受け、大学生の時に再読した時は、そのミステリー仕立ての構造に驚いた。
父が亡くなった今、3部構成の2つ目の章である「両親と私」を読んだらどう感じるのか興味があります。
銀の匙
中 勘助著
漱石が絶賛した作品としてよく知られており、私も中高生頃に漱石繋がりで読みました。
きらきらと滋味深く輝く幼き日の思い出。
でもセンチメンタル過ぎず、いい距離感で描かれていた印象がありますが、今読み返してみても同じ感想になるのだろうか。
持ってたはずなんだけどなーと部屋を探したけど、見つからなかった。
そういえば、この本は絶版にはならないだろうと踏んで、以前断捨離した時に処分してしまってたんでした。
なので、図書館で当時「屠殺場5号」というタイトルだった初版時頃の単行本を借りてきました。
大学時代、友人から薦められて読み、こんな文学があるのか!と驚いた。
生と死の捉え方、悪趣味とも受け取られかねない苦笑を誘うユーモア、時と場所を細切れに行き来する構造、だけども奥の奥に潜む正反対の人類への慈愛の心と悲しみ…。
その後、ヴォネガットをむさぼるように読み、「青ひげ」(「黒ひげ」って最初書いてたけど間違い。危機一髪や!)や「タイタンの妖女」など、さらに気に入った作品もあったけれど、著者との出会いのきっかけになったこの作品を今、読み返してみたい。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
フィリップ・K・ディック著
ヴォネガットを発端に、SFの名作にも一通り手を出してみたが、アシモフとブラッドベリ以外ではまったのはディックでした。
何よりタイトルがかっこよすぎじゃーありませんか?
ハードボイルドだけど、意外と読みやすく、クールで硬い雰囲気の割にちゃんとエンターテインメントしてて、世界観がすごく好きでした。
ロシアの作家はトルストイとかチェーホフとか、一応手を付けてみたが、自分にはドストエフスキーがいちばん面白かったです。
キャラクターが生き生きとしているというか…特に脇役の庶民のおじさんとか、あー、いるいるこんな人!って感じで。
そして、ドストエフスキーでは「カラマーゾフ」や「白痴」よりも「罪と罰」の方が楽しめた。
長い作品なので、読んでいる期間中、何をしていても主人公がそばにいるような感覚があった。
バスに乗ってぼーっとしている時なんかね…頭の中はロシアにいましたね。
傍から見るとあぶない人物よね、私ってば。
こちらにいらっしゃい
シャーリィ・ジャクスン著
図書館で借りて読んだ時は、本当に、すべてがとにかく好きすぎて、でももう絶版で手に入らず絶望したのを思い出しますわー。
自意識過剰で、密かな狂気に惑わされて生きている女性の主人公に、「これは…私?」と感じてしまった自分が怖かった。
野火
大岡 昇平著
できればもう二度と読みたくない気もする。
読める気力がないような気もする。
でも、読んだ方がいい、読まなくてはいけない、そんな気がする。
今、近くの映画館でこれが原作の映画をやっている。
観に行くべきか行かざるべきか。
長い別れ
レイモンド・チャンドラー著
チャンドラーを初めて読んだ時、そのスタイリッシュさにノックアウトされた。
ミステリーの枠を超えた上質な文章に酔う…という感じ。
その頃は「大人の世界やなー」と思ってたけど、フィリップ・マーロウより年を取った今の自分が読んでもその世界に酔えるだろうか?
※追記:ずっと「長いお別れ」と思ってました。「お」はいらなかったので修正。
ヒップな生活革命
佐久間 裕美子著
これだー!って思いましたね、初めて読んだ時。
いわゆる今も揶揄されがちな「意識高い系」のアメリカの人々の暮らし方を扱った初期の本だと思われる。
10年くらい経過したが、そこに変化はあるのか?
どんどんアップデートされていくので、今読んでみたら「もうそれは否定されてる」みたいな分野もあるのかしらん。
それでも、日本人は「戦争」を選んだ
加藤 陽子著
なんでや、って思うよね。
なんで負け戦と分かってそれを選んだ。
定期的に読みたい一冊。というか、読まないとおバカな私はすぐわけ分からんくなんてしまう。
その他にも、オノ・ヨーコ著「ただの私」や
Cormac McCarthyのThe Road、
カポーティの夜の樹、
そして、ミュージカルの音楽も好きなユーゴーの「レ・ミゼラブル」など、他にも強く心を揺さぶられた作品がある。
また、どうしても外せないのは萩尾望都センセの作品だが、「ポーの一族」「トーマの心臓」「訪問者」「ゴールデン・ライラック」「銀の三角」「百億の昼と千億の夜」など名作が多すぎて絞れない。
でもそろそろ再読の時機だなーとは思っている。
はてさて、今回の10冊について、今の私はどう感じるか?
最初に読んだ時の衝撃と同程度の心の震えはあるのか?
楽しみです。